タイトル:ゼロからトースターを作ってみた 著者:トーマス・ウェイツ
「1からアップルパイを作るとしたら、まずは宇宙を創造しなくてはならない」
天体物理学者 カール・サガン
己のルールに従いトースターをゼロから作成するという試みが本書である。
ルール1:トースターは店で売っているようなものでなければならない。
1 プラグをコンセントに刺すタイプの電気トーターでなければならない。
2 2枚のパンを両面同時にトーストで来なくてはならない。
3 一般的に「ポップアップ・トースター」として認識されているものでなければならない。
4 トーストする時間を調節できなければならない。
ルール2:トースターの部品はすべて一から作らなくてはいけない。
ルール3:自分にできる範囲でトースターを作る。
産業革命以前に使われていたものと「基本的に変わらない」道具を使って、自分でトースターを作らなければならない。
1 陸上を車で走ることは可。車は馬の現代版であるから、飛行機に乗ることは不可。飛行機は過去とは完全に切り離されたもので、産業革命以前の時代には同じ役割のものがないから。
2 一般的な道具の使用は可。それは電気ドリルでも可。それは本質的に手動ドリルと同じものだから。単に電気ドリクの方が作業が早いという違いしかない。3Dデザインソフトやロボットは使用不可。
そうルールは誰が決めたわけでもない己のルールを遂行していくのだが、なかなかストイックな男である。もうこの時点で自分は好きではある。
はじめは既成トースターのリバースエンジニアリングであるが一番安い3ポンド94ペンスのトースターであっても400以上のパーツで構成されている。中にはトランジスタ等の電子回路やプラスティック、種類すらわからない(鉄、銅、真鍮)みたいなものがたくさんと産業革命を賑わせた物達がわんさか詰まっている。
これらパーツも1から作成していこうというのだから、不可能であろうと誰もが考えるところであるが、著者はこう言っている。
「・・・はっきり言ってできる気がしない。助けが必要だ」
そう著者のここが素晴らしいできる気がするかしないかなんて関係ない、もう一瞬で行動を起こそうとしている。
ここでまず大学教授に教えを請うのだがまた教授の教えが素敵であるけっして心を折ろうとせず真摯に著者と向かい合ってサポートしてくれている。
素材集めにしても鉄を取りに行った鉱山では鉱山自体が観光スポットとなっていて洞窟がクリスマスイルミネーションで飾られている事態で出鼻からくじかれている。
マイカ、銅、ニッケル、プラスチックとそれぞれ作成にストーリーがありどれも先ほどの鉱山くらいのサプライズがついてまわり笑ってしまう。
最終形として残ったものに対し残った結果は
時間にして9ヶ月、移動距離3060キロ、金額約15万円
なかなかの重労働が数字だけで伝わってくる。
最後一台のトースターを作るのは大変ですよなのでトースターを安い値段で誰でも購入できることに感謝しましょうね的な終わり方は多少白けるが、本書から学べるところはそこではない、それ以外のところの実行力やクレイジーさ情熱は本当に素晴らしい、かなり面白い一冊である。